中小企業版SBTの要件と取得方法

中小企業版SBT認証の要件や取得方法は以下の通りとなっており、現時点で複雑なステップはありません。

Step1  排出量を算定

過去数年分、自社のエネルギー消費量データを収集する。その数値に適切な係数を乗じて排出量を算定します。

Step2   削減目標を設定

目標年は2030年にて固定となっています。そのため、算定結果を基に基準年(2018年から2021年のいずれか)を自社にて決定し、2030年までに達成する目標設定を行います。

Step3   SBTへの申請・承認確認

基準年と目標設定を決定した上で、SBTiへ承認申請を行います。申請方法はSBTiのWEBサイトから申し込みを行います。

 


 

 

Scope1 申請

SBTの申請は「SBTi」のホームページにアクセスし、申請フォームに入力して行います。

 

1. 「GET STARTED」をクリック

 

2.「SUBMIT」をクリック

 

3.「SBTi SME Target Setting System」をクリック

項目 リンク・ダウンロード先
通常SBT申請ページ SBT申請ページ(翻訳版)
通常SBT申請フォーム SBTi Near-Term Target Submission Form and Guidance
中小企業向けSBT申請ページ 中小企業向けSBT申請ページ
金融機関向け申請フォーム 金融機関短期目標提出フォーム
SBTiコーポレートマニュアル(日本語版) Version 2.0(PDF/1.39MB)

申請画面(114ページあります)

下記に関してすべて当てはまる必要があります

  • スコープ1及びロケーションベースのスコープ2の排出量全体で10,000tCO2e未満であること
  • 海上輸送船を所有又は管理しないこと
  • 発電資産を所有又は管理しないこと
  • 金融機関(FI)セクターまたは石油・ガス(O&G)セクターに分類されていないこと
  • 親会社の子会社ではなく、その親会社の事業が標準的な検証ルートに該当すること

下記に関して2つ以上当てはまる必要があります

  • 従業員数が250名未満であること
  • 売上高が4,000万ユーロ未満であること
  • 総資産が2,000万ユーロ未満であること
  • 強制的な森林・土地・農業(FLAG)セクターではないこと

*14ページ

 


ネットゼロ目標

中小企業は、ネットゼロ目標を設定する資格を得るために、目標を1.5°Cの短期的な科学的根拠に基づく目標と整合させる必要があります。これには、短期目標と長期目標の両方を設定し、短期目標を1.5°C経路に合わせることが含まれます。

このオプションは、基準年から短期(5〜10年)以内のネットゼロ達成を計画している企業にも利用できます。

(1) 短期目標(Near-Term)

5年から10年先を目標とする1.5度水準の排出削減目標です。基準年を2020年以降に設定する場合、スコープ1,2は2030年までに42%の削減が求められており、スコープ3は少なくとも25%の削減が求められています。(基準年が2020年以前の場合は毎年4.2%のScope1,2削減と2.5%のScope 3削減が求められています)短期目標の基準年と長期目標の基準年(目標の基準となり排出量を報告する年)は一致させる必要があります。

(2) 長期目標(Long-Term)

2050年までに1.5度水準と整合するために、企業がどれだけ排出量をどれだけ削減するかを示す目標です。長期目標では毎年の削減量は設定されておらず、スコープ1,2,3全体の90%を削減することのみが求められています。

(3) 中和(Neutralization)

短期目標と長期目標の達成に向けた取り組みによって排出量を90%削減しても、ネットゼロの達成とは言えません。残りの10%の排出量を炭素除去によって相殺する必要があり、これをSBTiは中和と呼んでいます。中和の方法としては炭素除去のクレジットが認められていて、排出回避のクレジットは認められていません。

(4) バリューチェーンを超えた緩和(BVCM)

BVCMは、Beyond Value Chain Mitigationの略称です。これには温室効果ガス排出を回避または削減する活動や、大気から温室効果ガスを除去・貯蔵する活動が含まれています。上記3つのバリューチェーン内で行われる削減と除去に加えてバリューチェーン外での取り組みを行うことでネットゼロへの移行を加速することを求めています。

  1. 会社の情報と連絡先の詳細を入力します。
  2. 必要な検証サービスを選択します。
  3. 排出量プロファイルのセクションに記入します。
  4. 検証サービスの選択に関連する必須フィールドに入力します。
  5. このフォームからT&Cに署名し、アップロードしてください。
  6. この申請を受理すると、SBTiはデューデリジェンスを実施します。このプロセスには通常 10 営業日かかります。
  7. 申請が承認されると、SBTiはターゲット検証サービスの請求書(該当する場合)を送付します。以下のスライドの表に記載の1回限りの料金をお支払いいただき、お支払い確認書を smes@sciencebasedtargets.org までお送りください。
  8. 最終確認は、コミュニケーションパックとターゲットパブリケーションに関する関連の詳細とともに、 smes@sciencebasedtargets.org を介して会社に送信されます。
  9. この目標は、 SBTiのウェブサイト および We Mean Business Coalition のコミットメントウェブサイトで公開されます。また、国連グローバル・コンパクトに参加している中小企業も表彰されます。

中小企業の目標検証手数料

選択したサービス 価格
新たな短期目標(維持目標を含む)の設定、または以前の短期目標の置き換え 1,250米ドル
(日本円¥188,034※2023年11月2日の為替相場)
新規ネットゼロ目標のみ設定(以前に1.5°Cの短期目標を設定した企業のみがこのオプションの対象となります) 1,250米ドル*
(日本円¥188,034※2023年11月2日の為替相場)
短期目標とネットゼロ目標の設定 2,500米ドル*
(日本円¥376,086※2023年11月2日の為替相場)

*これらの手数料は、9,500米ドル以上の標準手数料(+適用されるVAT)と比較して割引された手数料オプションです。年間売上高が1,000万ドル未満で、発展途上国および移行経済に本社を置く中小企業は、国連事務局の経済社会局が154ページの表BおよびCにリストアップしているように、目標提出手数料の免除を要求するオプションがあります。これらの企業に対する免除オプションは、短期目標とネットゼロ目標検証サービスの両方に適用されます。私たちは、発展途上国に拠点を置く大規模な多国籍企業に対し、免除の恩恵を最も受ける企業のために免除を確保できるよう、通常のサービス料を支払うことを奨励しています。

 

 

Scope2 排出量の報告方法

  • 基準年の排出量を算定する際は、GHGプロトコルScope2ガイダンスのロケーション基準またはマーケット基準のどちらか一方を選択
  •  国・地域によらず基準は統ーする必要がある
  • マーケット基準を選択したものの、マーケット基準で適用する排出係数がない国・地域(電力自由化等が未実施)は、自動的にロケーション基準の排出係数となる。

【ロケーション基準】

ロケーション基準で算定する場合は、特定のロケーションに対する平均的な電力排出係数に基づきScope2の排出量を算定します。

排出係数には優先順位が定められています。
最も高い優先順位にあるのは、系統の範囲や同一の法体系が適用される範囲における平均排出係数です。
系統平均排出係数よりも低炭素な電気を使用している場合でも企業は排出量を算定する際に反映させることができません。

【マーケット基準を用いた算定方法】

ロケーション基準を用いて算定する場合と同様に、活動量に排出係数を乗じることで温室効果ガスの排出量を算定することができます。マーケット基準に基づき算定する場合は、契約している電気の排出係数を用いることができます。

また、証書などを購入している場合はその結果を反映させることができます。マーケット基準を用いた場合の基本的な計算式は

【各拠点の電気の使用量(kwh)×各拠点の契約電力会社の事業者別排出係数】になります。

削減目標の設定

 

 

Scope3 カテゴリー

 
Scope3カテゴリ 活動例 算定方法
活動量 排出原単位
上流
1 購入した製品・サービス  原材料・消耗品の調達等  調達量または調達金額 (5)産業連関表ベースの排出原単位 
2 資本財  生産設備の増設  年間設備投資額  (6)資本財価格当たり排出原単位
3 Scope1,2に含まれない燃料
およびエネルギー関連活動
 調達している
燃料・電力の上流工程
(採掘や精製など)
 燃料の調達量  (7)電機・熱調達量あたりの排出原単位
4

 
輸送、配送(上流)

 
 調達物流、横持物流、
出荷物流

 
 
 a.燃料使用量 (2)輸送に関する排出係数(燃料法)
 b.輸送距離÷燃費 (2)輸送に関する排出係数(燃費法)
c.貨物重量×輸送距離 (2)輸送に関する排出係数(トンキロ法)
5 事業から出る廃棄物 廃棄物の自社以外での
輸送・処理
廃棄物の処理量 (9)廃棄物種類・処理方法別排出原単位
6

 
出張

 
従業員の出張
 
 
a-1.出張旅費金額 (11)交通費支給額あたり排出原単位
a-2.宿泊数 (12)宿泊数あたり排出原単位
b-1.従業員数、延べ出張日数 (13)従業員あたり排出原単位
7 雇用者の通勤 従業員の通勤 a.通勤費支給額 (11)交通費支給額あたり排出原単位
    b.従業員数、勤務日数 (14)従業員・勤務日数あたり排出原単位
8 リース資産(上流) 自社が貸借している
リース資産の稼働
a.通勤費支給額 (15)建物用途別・エネルギー使用量あたり
排出原単位
    b.建物面積 (16)建物用途別・単位面積あたりの排出原単位
下流   
9 輸送、配送(下流) 出荷輸送、倉庫での保管、
小売店での販売
出荷物の重量、輸送距離 (2)輸送に関する排出係数(トンキロ法)
10 販売した製品の加工 中間製品の加工 加工時エネルギー使用量、
製品出荷量等
(1)温対法算定・報告・公表制度における
排出係数・エネルギー種別の排出原単位
11 販売した製品の使用  使用者による製品の使用    
・エネルギー使用製品  例)
自動車、エンジン、家電
 製品の最終出荷量、平均使用時間、
耐用年数、等
(1)温対法算定・報告・公表制度における排出係数
・使用エネルギーの排出原単位
・燃料  例)
ガソリン、天然ガス、石炭
 燃料の出荷量 ・燃料使用時の排出原単位
・温室効果ガスを排出する製品  例)
ドライアイス、消火器、肥料
 製品の出荷率、漏洩率 ・地球温暖化係数
12 販売した製品の廃棄 使用者による製品の
廃棄等の輸送、処理
製品ごとの廃棄物量、出荷量、等 (8)廃棄物種類・処理方法別排出原単位
(9)廃棄物種類別排出原単位
13 リース資産(下流) 他者に貸借している
リース資産の稼働
リース資産のエネルギー使用量 (1)温対法算定・報告・公表制度における排出係数
-エネルギー種別の排出原単位
14 フランチャイズ 自社主宰の
フランチャイズ加盟者の
Scope1,Scope2の活動
フランチャイズ加盟者の
エネルギー使用量
(1)温対法算定・報告・公表制度における排出係数
-エネルギー種別の排出原単位
15 投資  株式投資、債券投資 保有株式 投資先の1株あたり排出原単位
(投資先のScope1,2排出量、総発行株数)
 プロジェクト
ファイナンス
投資先プロジェクトの
生涯稼働時のエネルギー使用量
 エネルギー種別の排出原単位
(1)温対法算定・報告・公表制度における排出係数

 

規約と条件

 

『利用規約』のファイルをダウンロードして記入し、アップロードをします。

 

 

 

 

まとめ

 

1.中小企業版SBTとは

SBT(Science Based Targets)は、企業が地球温暖化対策として設定する目標の一つであり、科学的に裏付けがある目標を達成することを目指しています。SBTはCDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)という4つの国際機関のパートナーシップにより運営されており、企業が自身の温室効果ガス(GHG)排出量を低減し、気候変動に対抗するために、科学的な手法を用いて設定される目標に対して認証を与える役割を持っています。
SBTの中で「中小企業版」は、規模が小さい企業や中小企業向けに適用される枠組みです。これは、大企業と同様に、科学的に根拠があり、達成可能かつ効果的な温室効果ガス削減目標を中小企業が設定して削減活動に取り組めるよう、より簡便な方法で申請、承認ができる枠を設けているものになります。

2.2024年1月の制度変更内容

新しい制度は2024年1月1日に発効し、SBT認証を申請する全ての中小企業に適用されます。既に中小企業版SBT申請を行っている企業には、即座に行動を起こす必要はありません。2024年1月1日以降、SMEターゲット検証ルートを利用したい企業は、新しいSMEの定義に従う必要があります。また、2024年1月1日以降に目標を再計算または更新する中小企業が申請を行う際には変更が適用されます。
 
ここからは、具体的な変更点について解説します。


2.1(変更点(1))対象となる中小企業の定義

中小企業の定義が、少し複雑になっています。
条件(1)企業が中小企業と見なされるには、以下の条件が全て該当する必要があります。

  1. スコープ1およびロケーションベースのスコープ2の排出量が10,000tCO2e未満であること。
  2. 海運船舶を所有または管理していないこと。
  3. 再エネ以外の発電資産を所有または管理していないこと。
  4. 金融機関セクターまたは石油・ガスセクターに分類されていないこと。
  5. 親会社の子会社であり、その親会社の事業が標準的な検証ルートに該当しないこと。

 
条件(2)以下の条件のうち2つ以上に該当することも必要です:

  1. 従業員数が250人未満であること。
  2. 売上高が4,000万ユーロ未満であること。
  3. 総資産が2,000万ユーロ未満であること。
  4. 森林、土地および農業(FLAG)セクターに分類されていないこと。

 
これらの条件は、欧州連合(EU)のCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)の中小企業基準に準ずるように改定されたものです。
特に大きな変更ポイントは従業員数になります。今までの制度では「従業員数が500人未満であること」が必須要件であったため、今回の変更で売上高、もしくは総資産の要件がクリアできる企業であれば500人以上の企業でも申請ができるようになるため、中堅企業の皆さまは要件該当を再確認することが重要になります。
また、売上高、総資産要件が追加されたため、英文での財務諸表提出が必要となる場合があります。申請を検討されている方は用意することをお勧めします。

2.2(変更点(2))価格

認証手数料について、中小企業向けの料金が1,000ドルから1,250ドルに引き上げられることが発表されました。この値上げは、持続的なインフレを考慮したものであり、中小企業パスウェイが開始されて以来、初めての調整となります。
また、発展途上国および経済移行国(国連経済社会局の定義に基づく)に拠点を置く、売上高が1,000万ドル未満の中小企業は、手数料免除の対象となるような変更も同時に行われます。日本の企業は当該定義には当てはまらないので皆さまは特に意識する必要はないです。

3.審査プロセス

中小企業版SBTの制度変更アナウンスには直接記載されていませんが、審査プロセスの中でデューデリジェンス(提出資料の精査)が強化されているようです。ここであらためて中小企業版SBTの申請ステップについて説明します。

ステップ1:中小企業ターゲット設定フォームの記入

申請フォームを使用して、情報を記入し、削減目標を選択し、基準関連の質問にすべて回答します。電子メールによる提出は受け付けていません。
オンライン申請は3つのパートに分かれています:

  1. 中小企業の一般情報
  2. 目標検証サービスの選択:サービスの選択、基準年の選択、温室効果ガスプロトコルに準拠した関連情報(活動および排出量)の提出
  3. 契約条件と支払いに関する情報

 
ステップ2:デューデリジェンスとターゲットの承認

すべての情報が完全かつ正確であることを確認するため、SBT事務局によるレビューが行われます。情報に不備や矛盾がある場合、全体のプロセスに遅れが生じる可能性があります。デューデリジェンスに合格した後、目標の承認を確認するためのメールが送信されます。

ステップ3:請求書発行と手数料の支払い

Terms & Conditions(利用規約)を締結し、SBT事務局から支払い詳細を中小企業に送付します。その後、SBTの支払い証明書をsmes@sciencebasedtargets.orgに提出します。

ステップ4:支払い確認と目標確認

SBT事務局は支払いの受領を確認します。その後、最終確認メールが中小企業に送信され、ターゲットの承認と登録が確認されます。このメールには、コミュニケーションパックとターゲット公表に関する関連詳細が含まれています。

ステップ5:請求書発行と手数料の支払い

この段階で、ターゲットはサイエンス・ベース・ターゲット・イニシアチブ(SBTi)のウェブサイトおよびパートナーのWe Mean Businessのウェブサイトで公表されます。ウェブサイトは毎週木曜日に更新され、新しいターゲットが反映されます。

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